「伊豆半島ジオパーク」訪問記(中)

「秩父ジオパーク」訪問記(中)
                                               
≪ (上)からの続き ≫
  
 視察2日目、午前中は伊東市役所内で会合、午後は修善寺(伊豆市)に移動して、夜半まで会合に参加し、もう一度移動して、21時以降で伊豆長岡に投宿の予定です。

 伊東市役所内では、伊豆半島GP推進協スタッフによる運営体制の解説と質疑応答。説明側として、地学の選任研究員1名、静岡県からの出向者1名、伊東市からの出向者1名が参加されていました。

 将来は「伊豆学」を目指すという、教養的な意味合いの濃い「ジオパーク検定」と、それとは性格の異なる有料の「ガイド養成講座」の合格者から成る有料ガイドによる「伊豆半島ジオガイド協議会」の在りようは、よく練られたものと思われました。
 伊東地域の火山群を研究していた静岡大学の教授による地方紙への連載コラムがきっかけとなり、静岡県知事や伊東市長も意気投合して、GP運動が始まったことも伺いました。
 
修善寺橋Ed トップダウンでもボトムアップでもなく、ミドルからのアップ⇔ダウンとして機能する推進協のユニークさは、多くの市町を抱える伊豆半島GPには、必須の形態なのかも知れません。推進協のフットワークを軽くしそうな、この組織形態は参考になります。

 昼食は市役所8Fの食堂で、伊東湾を見下ろす絶景を堪能しました。
 この後、箱根と天城の山峡を通る冷川峠を越え、太平洋に注ぐ川の中では唯一の北上する川=狩野川の中流部に掛かる「修善寺橋」を渡って、午後の会合予定地=「修善寺総合会館」を目指しました。                              <図5.修善寺橋下流の狩野川

 2日目午後2時~は、伊豆半島GPのガイド協会の会合に、銚子からのスタッフがオブザーバーとして参加の予定と聞いていましたが、何か手違いがあった模様で、この会合には参加できませんでした。
 この後、市民の会のスタッフが1名帰宅し、総勢6名になりました。

 銚子からのスタッフは、急遽空いた時間を使って、狩野川上流へ向けて下田街道を南下し、湯ヶ島を越えて、小説や歌にその名を知られた『天城越え』に登場する「浄蓮の滝」ジオサイトを、独自に訪問しました。
 浄蓮の滝は、狩野川上流の本谷川に掛かる滝で、滝の岩盤には、綺麗な柱状節理が、カーブを描いて並んでいるのが見えます。
 滝の南東1kmにある鉢窪山は、1万7000年前に噴火した火山のスコリア丘で、その麓から流れ出した溶岩流が、本谷川とその支流=岩尾川が刻む険しい谷を埋め立て、この溶岩台地を流れる川が、滝となって落下するのだそうです。
 今年の中伊豆は少雨と聞いていましたが、滝は見事な水量で落下しており、周辺のハイコモチシダもワサビ田も元気でした。 
 若い頃に来た時は苦にもしなかった、ここの谷底からの登り階段で息切れし、後から来た学生さん達に追い越されました。

天城九制木Ed 滝からの帰途、下田街道を更に南下し、道の駅「天城越え」内にある「昭和の森」会館を訪問し、建物入口を入る前に、背景に広がる「天城山昭和の森自然休養林」の天然林の魅力に圧倒されました。
 天城山は、幕府の天領⇒戦前は皇室御用林として、「天城九制木」=杉・松・桧(ヒノキ)・欅(ケヤキ)・楠(クス)・椹(サワラ)・樫(カシ)・樅・(モミ)・栂 (ツガ)を定め、これらを伐採禁止にして、森を保護していました。この9種の   <図6.天城九制木の樹木標本>    樹木標本が展示されています。

枯野船模型Ed 古事記に登場の古代船「枯野(カラヌ)」、または日本書紀に登場の伊豆国の「軽(カルノ)」の模型も展示してあります(1/5に縮尺して長さ3m)。
 良質の船材=楠を神木とする「軽野神社」(修善寺に近い)に楠を集積し、軽野あるいは船原(湯ヶ島に近い)で船を造り、狩野川から駿河湾まで運んだと考えられているそうです。それが狩野川の由来となり、カヌーの語源となったいう説もあり、夢が膨らみます。                       <図7.古代船「軽」の模型  

鹿食害皮剥ぎEd 「修善寺総合会館」に戻った後、伊豆半島GP推進協スタッフの皆さんと合流し、ここの敷地内でディナー・ミーティングに臨みました。
 「昭和の森」会館の展示に見るまでもなく、古代から船材を出荷してその名を知られた狩野川流域でも、戦後、一斉に行われた杉植林とその後の収益減少による手入れの困難さ、シカの新芽・樹皮食害、等が問題になっているそうです。食事に同席された方のお店では、ジビエ(野生肉)料理を提供されているが、今年はハンターの誤射による事故で狩猟が中断していることなど、房総半島の森林とも共通する切実な話題が登場しました。
  <図8.シカ食害で樹皮を剥かれ枯死した       夕食後は、各地のビジターセンターと連携しながらも、伊豆半島GPの中央  樹木:「 伊豆の自然を守る会 」ブログより   拠点施設として機能することになった、修善寺の施設のあり方を検討する会合に、銚子からのスタッフがオブザーバーとして参加しました。地元の代表は、観光協会を始め、レンタサイクルを置いている修善寺駅前の商店主の方など、多彩でした。
 伊豆半島GPでは、今迄、拠点は伊東に集中していたが、東名・沼津~新幹線・三島からのアクセスの良さに注目し、今後は、修善寺の拠点を重点的に拡充していくそうです。
 会合の終わりに、銚子の推進室の専門員が、パワーポイントを使って、銚子GPのプレゼンを行いました。
 質疑では、銚子のGP大使=「ジオっちょ」でラッピングされた自販機と、「ジオっちょ」や銚子GPのロゴを配した方向表示板のデザインに質問があり、市民の会スタッフが回答しました。

 この会合の開始直前に流れていたビデオ画像は、伊豆半島GPの選任研究員の方が、性能向上と低価格化が目覚ましいラジコン・ヘリで撮影されたものだそうで、海から半島先端部を接写するニーズのある銚子でも、参考になります。       

   文責 :  伊豆半島GP視察に参加したHP&ブログの担当スタッフ  in  銚子ジオパーク推進市民の会

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「伊豆半島ジオパーク」訪問記(上)

伊豆半島ジオパーク_訪問記(上)

 9月4日(木)~9月6日(土)に、千葉科学大学 安藤研究室が主催し、「銚子ジオパーク推進室」(以後、「推進室」と略称)と「銚子ジオパーク推進市民の会」(以後、「市民の会」と略称)が参加して、「伊豆半島ジオパーク」への視察が、2泊3日で行われました。
 参加者は、安藤研究室から3名(安藤教授と学生2名)、推進室から専門員1名、市民の会から3名(副会長含む)の、計7名(男性5名・女性2名)となりました。
 うち、6名は千葉科学大学のバンに同乗し、1名は電車で訪問しました。

JakarandaEd 往路の大学構内から大室山のリフト前(伊東市富戸)までは、県道254号⇒(中略)東名高速(中略)国道135号(中略)県道351号の255km強(約5時間)。
 2日目昼の伊東市役所から修善寺総合会館(伊豆市)までは、国道135号⇒県道12号⇒県道59号⇒県道12号⇒国道136号の24.1km(約50分)。
 2日目夕の修善寺総合会館(伊豆市)から伊豆長岡温泉は、県道18号⇒国道136号県道130号の8.5km(約10分)。
 3日目朝の伊豆長岡温泉から「楽寿園」(三島駅前の市立公園)までは、修善寺道路国道136号県道130号の11.9km(約25分)。                <図1.ジャカランダの花>
 復路の楽寿園から大学構内までは、県道21号新東名高速(中略)県道254号の240km強(約4時間)。
 各ジオサイト間の移動を含め、終始、バンを運転された安藤教授に、厚くお礼申し上げます。

 熱海から伊東へと進み、国道135号線が渋滞している時、道路の山側には、ジャカランダ(ノウゼンカズラ科)の並木がありました。特徴ある鳥の羽のような葉の間に、所々花が残っています。花盛りは6月下旬くらいでしょうか?なんと1本だけ、青紫の花を満開に付けている木を発見し、つい嬉しくて騒いでしまいました。

 伊豆半島ジオパーク(以後、すべての「ジオパーク」表現を「GP」と略称)は、銚子GPと同じく2年前にJGN(日本GPネットワーク)によって正会員に認定された同期のGPながら、認定の直後から、「ジオパーク検定」を実施したり、資格を持った専門ガイドによる有料ジオツアーを実施したり、火山岩の諸形態を象った「ジオ菓子」を販売したりして、数あるGPの中でも優等生と見做されています。
 また、伊豆半島GPの説明板・パンフレット・HP(ホームページ)についても、分り易く優れた内容と、統一感のある洗練されたデザインは、銚子GPにとって、学ぶところが大きいと思われます。
 更に、伊豆半島GPは、この夏、世界GPへの日本からの候補として、JGNによって推薦されています。

相模湾遠望_1206Ed 視察1日目は、午前中を移動にあて、午後2時~6時に、「大室山~城ケ崎~一碧湖」ジオツアーに参加し、午後6時半には、溶岩洞窟ジオサイトのある旅館に投宿の予定です。
 1日目のジオツアーでは、伊豆半島GPの優良(有料)ガイドさんによる案内がありました。

 「4000年前に噴火した火山のスコリア丘」と解説された大室山では、バリアフリーに向けて、遊歩道の拡幅工事が進んでいました。               <図2.大室山から相模湾遠望     頂上から南側を見下ろすと、奥の矢筈山との間で、大室山からの溶岩流が作った堰止湖を干拓したという、「池」集落の西側の水田が、色付いた稲穂を見せています。
 「この山には何故、木が生えていないのでしょう?」という問には、「毎冬の山焼き」という回答がありました。
 後から分った話では、大室山=池地区の入会地は、(萱葺き屋根の時代には)萱刈場だったそうで、今では、この地区が立ち上げた会社が大室山リフトを運営しているそうです。
 江戸後期に全国を測量した伊能忠敬測量隊は、第9次測量で2回目の伊豆測量をしています(70歳になった伊能忠敬自身は参加せず)。この時、池集落に立ち寄り、『伊能忠敬測量日記』は、「文化十二(1815)年十二月一日。八幡野村から池村山湖畔」と記述しており、この時代には未だ湖だったことが分ります。
 因みに、第2次測量で訪れた銚子には、昨年、『伊能忠敬銚子測量記念碑』が建立されました。

 次に、「大室山から相模湾に流れ出した溶岩流が作った」という城ケ崎に移動しました。
 ガイドさんは健脚で、アップダウンの多い道が延々と続く、城ケ崎に至る長い遊歩道を、どんどん、先頭に立って歩いて行かれます。
柱状節理_1216Ed 雑木林が途切れる所では、眼下に砕ける白波が岩を洗っており、ここでは複数のスタッフが、夭折した鎌倉三代将軍=源実朝の短歌を思い出しました。
    大海の磯もとどろに寄する波 割れて砕けて避けて散るかも
                       源 実朝 『金槐和歌集』 所蔵

 荒々しい礫浜の手前に、ハマゴウが青い花を付けていました。銚子では砂浜を匍匐する背の低い草ですが、ここでは1m以上の草丈で群落を作っています。
 城ケ崎付近の海側では、見事な柱状節理が見られます。これは、溶岩流    <図3.遊歩道から見る城ケ崎海岸  が海水に触れて冷却された結果、溶岩に多角形の亀裂が入って、六角柱をはじめとする多角柱状になったものだそうです。
 「門脇吊橋」に近い岩場から直ぐの、海食でできた「つばくろ島」には、アマツバメのコロニーがあり、ほんの1週間前まで、営巣していたそうです。
 吊橋近くの岩場に腰を下ろしていると、イソヒヨドリが啼きながら頭上をかすめ、陽の傾いた遠い洋上では、オオミズナギドリが海面すれすれを飛び交っています。
 今回のガイドさんは、本来、鳥を専門にされているということで、特に鳥の解説で精彩を放っておられました。 
 先述の『伊能忠敬測量日記』は、「十二月三日。晴天。富戸村止宿を出立」し、やがて門脇鼻に到達し「右一町余沖燕島周一町計」と記述しており、この時代、既にアマツバメが営巣していたようです。

 
1日目のジオツアー、最後の見学地は、「10万年前の水蒸気マグマ爆発によってできた火口湖という、一碧湖、および、その双子の沼池です。
蝦夷ミソハギEd 調査の結果、この時の噴火によってできた火口は、一碧湖や沼池だけでなく、北西-南東方向に5つの火口列が並んで同時に起きた、割れ目噴火によるものと分っているそうです。
 アシやフトイが繁茂した沼池を遊歩道から見下ろすと、巨大な鯉が沢山泳いでおり、その合間を縫って中型の亀が何匹ものんびりと泳いでいました。
 貴重な湿生植物の宝庫だという沼池の、遊歩道の近くでミソハギに似たピンクの花を付けているのは、ガイドさんが配布されたガイドマップによれば、エゾミソハギだそうです。                                     <図4.エゾミソハギの花        この「一碧湖」ガイドマップは、今回のガイドさんが編集されたものだそうで、素晴らしいガイドさんだと思いました。
 「一碧湖」に限らず、伊豆半島GPのマップやガイドブックは、掌サイズに折り畳めるものが多く、使い勝手を良く考えて作られています。
 
                 
      文責 :  伊豆半島GP視察に参加したHP&ブログの担当スタッフ  in  銚子ジオパーク推進市民の会

                                              ≪ (中)に続く ≫
 

つくば産業技術総合研究所の一般公開訪問記

つくば産業技術総合研究所の一般公開【注】_訪問記

産総研一般公開LeafletEd  つくば市の産業技術総合研究所で、7月19日(土)、つくば市と茨城県が後援する一般公開がありました。
 そのうち、地質標本館では、
高橋雅紀博士(地球変動史研究グループ研究員)による、特別展示『 地質アナログ模型の世界 』特別講演『 ジオラマ模型で覗く地質の世界 』・『 関東平野の地下旅行 』が開かれました。
 「銚子ジオパーク推進市民の会」では、これらを見学・聴講しました。
 
高橋先生の講演に先立って、『 もっと地中熱を利用しよう 』の講演と実験施設の見学にも参加し、地中熱発電のメリットと普及に当たっての問題点などを考えました。
  

 また、本部情報棟のネットワーク会議室では、特別企画地球を楽しもう!全国のジオパークと筑波山の地質 』が開かれ、今回は、白山手取川・ふくい勝山・銚子の、3ヶ所のジオパークが参加しました。  <図1.一般公開のリーフレット>
 銚子ジオパーク推進室は、講演会『 バーチャルジオツアー 』で銚子ジオパークを案内するとともに、参加した一般客に、銚子ジオマップ銚子産石を貼る体験をして頂きました。
 「銚子ジオパーク推進市民の会」のスタッフは、この石貼り体験のアシスタントを務めました。            

 これらのイベントに参加した「市民の会スタッフが以下の訪問記を寄せてくれました。


      ・・・・地質標本館での高橋雅紀氏特別講演を中心として・・・・ 

ジオラマ模型で覗く地質の世界Ed  高橋雅紀氏は、これまでも何度も、銚子を訪問調査されている。今回は、「日本列島形成」に伴うイベントにとって最重要な地として、“銚子”を取りあげてきた高橋雅紀氏の、二つの講演を聞いた。
 

 ・午前11-12時 『ジオラマ模型で覗く地質の世界』では、ジオラマ作製の実際が披歴された。
 一般の人々にとって取りつきにくい地質の世界を、解りやすくするため、地質図を三次元化したジオラマ模型を思いついたものの、「何を遊んでいるのだ!」と思われかねず、他の研究者・上司に気
  <図2.高橋雅紀氏の動画オープニング>   取られぬよう、内密に作製した苦労談を交えながら、話された。

犬吠埼の銚子層群Ed ・午後1-2時 『ジオラマ模型で覗く地質の世界』では、関東地方の地下の地質が示された。
 「関東地域の地下等深線ジオラマ」によって、“前孤海盆”ゆえに陥没する関東地下の基盤岩と、その上に堆積した軟弱地層が、地下等深線により明確に識別されることから、例えば、震度の差・長周期振動などの説明が容易になった、等の説明があった。

 「関東・大阪両地下等深線ジオラマ」などは、今回は玄関ホールでの展示だったが、近々、常設展示される予定。                                               <図3.動画でも紹介された犬吠埼の白亜紀地層

産総研石貼り体験Ed
 今回は展示されていなかったが、「日本海の拡大・形成」によって、ユーラシア大陸に隣接していた日本列島が、「中央構造線」の
“左横ずれ”によって、本州で“逆くの字型”に折れ曲がる「時系列動態ジオラマ」?も、本日の話の理解には必須だと思った。
 このジオラマは、今年5月に銚子で開催された、深田研究所・談話会主催の『東西日本の地質境界を歩く』の講演(銚子市勤労コミュニケーション・センターで開催)の際に、高橋雅紀氏によって提示された。

 また、別棟・別会場の『地球を楽しもう』で行われた、銚子ジオパ <図4.銚子ジオマップに銚子の石を貼る体験  ーク推進室による、バーチャル・ジオツアーや実習コーナーも好評だった。実習では、銚子ジオサイトで産出する岩石や火山灰を貼り付けて、ジオマップを完成させた。  

                             文責 : 椿 敬一郎   (補筆&画像提供&編集 : HP&ブログの担当スタッフ

【注】  つくば産業技術総合研究所の一般公開  2014/07/19(土)9:30~16:00 >
       地質標本館 2014 夏の特別展 「地質アナログ模型の世界 
 2014/07/15(火)~10/13(月)9:30~16:30 > 

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