5月26日(日)10:00~14:00に、「銚子ジオパーク推進市民の会+千葉科学大学」の主催で、『基礎講座・野外見学会_犬吠埼』が開催されました。
 
 午後1時17分の干潮時には、潮位が20cmと予報されており、満潮時より104cmも下がることになります。快晴・ 微風・気温18.5℃(朝9時)の爽やかな空気と相俟って、犬吠埼の岩場の観察には絶好の1日です。
 
 「市民の会」スタッフは9:00に集合し、灯台下の岩場での今日のガイドに備え、銚子層群犬吠埼層の特徴を備えた以下の8ヶ所のジオスポットに、「簡易標識 」を設置しました。

出発_DSC01487 (1) 砂岩泥岩互層
 (2) ハンモック状斜交層理
 (3) 漣痕
   (ウェーブ・リップルとカレント・リップル)
 (4) 生痕化石
 (5) 蜂の巣状風化
 (6) 生物擾乱
 (7) ノジュール
 (8) 皿状構造 
 今朝の満潮が5:56だったので、潮位は既に十分下がっており、今回は、目標とするジオスポットのすべてに、標識を設置することができました。

 灯台脇の観光センターの隣に、銚子市マスコット・キャラの「超Cちゃん」をあしらった幟旗と、「推進協議会」の幟旗を立て、受付テーブルを出して、お客様を迎えました。今回は、千葉科学大の1年生70名を含む、120名以上の方がお見えになりました。
 首都圏の 120km 以上離れた市の方や、私達「市民の会」も出かけた地球惑星科学連合のプレゼンからの帰途に立ち寄られた北海道在住の方など、広域からの参加者があったのも、この好天と干潮のお陰と、太陽と月に感謝した次第です。 
 午前中は、毎回10数名の1グループに1人ずつ、「市民の会」ガイドが付きました。人数に余裕のあった午後は、5~6人の1グループに1人ずつ、「市民の会」のガイドが付きました。 今回も、お客様のご要望に応じて、20分~1時間30分の範囲内で、内容をアレンジしました。 写真右上は、市民ガイドと共に見学地に向かうお客様。 

項目CHK_DSC01489 ガイド内容は、前述の「簡易標識」の場所で、(1)~(8)の地質の成立状況を説明するほか、随時、犬吠埼の崖地に見られる植物群や、灯台+波高計+電波塔の説明などを付加しました。 
 大学からジオポイントについての課題を出されている学生さん達は、市民ガイドの説明に、熱心にメモを取っていました(写真左上)。

 気候が良くなり、灯台周辺の野草も開花が進んでいます。
 海への階段を降り始めると、先ずノアザミの赤紫の花が人目を惹き、夏が近いことを知らせます。春を謳歌していたジシバリの、タンポポに似た黄色の花も、未だチラホラ見かけます。
 崖の地面を這うようにして咲く、テリハノイバラの白い花びらの上には、黄色の蕊がギッシリ載っています。遊歩道に這い出しているのはスイカズラ、淡黄と白の2種の花が、1本の蔓に混在させて咲いてい
ます。
 海岸の草地が好きなイヨカズラも、照葉の上に淡黄の小花をボンボリのように付けています気の早い夏の花、コマツヨイグサの黄色の花もそこここに見えます。
 岩場では、ハマボッスが小さな白い花を開いて、今が盛りです。木本では、4月~6月と花期の長いトベラが、照葉の上に、白い多くの小花を円盤状に付けています。

 灯台前広場から海への階段を降りて行く時、真っ先に目に入ってくるのは、白亜紀の付加体として高校地学の教科書にも載っている、
砂岩泥岩互層です。外房の荒い波が泥岩を削り、徐々に、砂岩ばかりが残ってゆく様や、その硬い砂岩も、波打ち際では陸側より丸みを帯びている様子を観察します(写真右中)。学生さん達も、大学で堆積構造を勉強したばかりなので、堆積時の断面を見て、並行層理斜交層理の成り立ちを、確認しました。

岩場を歩く_DSC01493
 次は、少し後に下がって、砂岩泥岩互層の岩体から距離を置き、ハンモック状斜交層理の観察です。これは、ストームの波浪により形成され、波長 1m 以上の独特のうねりが浅海の海底に2~3mの窪みをつけ、層理面に斜交する構造です。これが複数重なり合って、犬吠埼層を特徴付ける、見事な層理を成しています。

 陸側に目を転じて進むと、砂岩の表面には、 管状生痕を残すスナホリムシなどの生痕化石が一面に続いています。その傍らでは、蜂の巣状風化が、ネーミングにピッタリの形状で、目を惹きます。ここでは、管状生痕を堤防がわりに、海水が溜り、日照で塩分が濃縮されて、砂岩表面を化学変化によって削ってゆく様子を観察しました。写真左下は、市民ガイドの解説に耳を傾ける人々。

ガイド解説_DSC01497 蜂の巣状風化は、海水が蒸発して塩分が結晶する時の岩のひび割れ部分が成長すれば、管状生痕がなくても形成されますが、犬吠埼では、スナホリムシなどの生痕化石が、蜂の巣状風化を助長しています。 
 白亜紀の温暖な浅海には余程多くの生物が繁栄していたらしく、スナホリムシなどが砂の表層を掘り進むことで、管状生痕が層理面を乱している箇所に到達、生物擾乱を目の当たりにしました。

 砂岩の窪地に現在の砂が溜まって、波の移動に連れて漣痕が残る場所があります。ここで、現生のカレント・リップルを観察します。砂岩泥岩互層の表面にある漣痕の殆どは、 白亜紀のカレント・リップルで、引き波で残された砂の傾きが確認できます(写真右下)。 

 岩場に、断層による落ち込みがあって、浅い漣痕にも拘らず保存されている部分では、緩やかな波で水が同じ場所で回転した結果としての、白亜紀のウェーブ・リップルが確認できます。

観察学生_DSC01501 今回は、普段は近づけない奥の方にある、皿状構造も見学できました。陸側から、一気に大量の砂が流入して柔らかな堆積岩を覆ったことにより、下になった 堆積岩の層理面から水分が抜け出した痕跡が、丁度、浅い小皿を並べたように、小さなカーブを連続させています。上部の分厚い斜交葉理と下部の皿状構造との間には、乱れた形状の小さなコンボリュ-ト葉理が連続しています。ここでは、水分だけでなく、柔らかな砂の層もゴソッと抜け出したことが伺えます。

 干潮を利用して、これも、普段は近づけない波打ち際のノジュールを観察します。ざっと眺めただけでも、10数個のノジュールが、砂岩の中から顔を覗かせています。ここのノジュールは、綺麗な球形のものが多いのが特徴です。国の天然記念物に指定(2001年11月)されているので、たまにTVで目にする北海道のノジュールのように、コンコン割る訳にはいきませんが、過去の調査結果から、中に、アンモナイトや同世代のエビなどが入っています。球形ノジュールの成因については、「生物の死後に体内のカルシウムが溶け出して、それが周囲に砂を凝集して球形になった」という説が有力です。他にも、球体に頭だけ突っ込んだ状態で、エビのノジュールが発見されることから、「球体は、アンモナイトやエビの生存時の住居」、という見方もあります。白亜紀も、他の時代に負けずに、不思議な時代ですね。